Bio (日本語)

<佐藤ローデン千恵プロフィール>

1981年9月、ニューヨーク・タイムズの音楽批評家、バーナード・ホランドによる、「プログラムすべての曲の一つ一つの音を、いとおしむように大切に大切に弾いた。テクニック、特に強弱のコントロールには目をみはるものがあった」(1981年9月20日付け)という言葉をはなむけとして、佐藤ローデン千恵はピアニストとしての道を歩み始めた。それ以来、米国、英国、カナダ、イタリア、ロシア、ノルウェイ、ドイツ、日本各国で日本と米国の現代曲を中心に演奏活動を続け、その間、委嘱、初演は50曲以上にのぼっている。

1993年10月のカーネギーホール内、ヴァイル・リサイタル・ホールで行われた“日本とアメリカのピアノ作品を集めて”と題したリサイタルはローデンの典型的なリサイタルのひとつである。この日の演奏についてアラン・カズンは、「汎太平洋のレパートリーを紹介するエネルギッシュで、力強い演奏だった」と評している。この演奏会に先立ちローデンは、ニューヨークを代表するクラシカル・ラジオ局、WNYCのモAround New Yorkモという番組でレパートリーの一部を紹介。また翌年の秋には、東京のバリオ・ホールで日米作曲家の作品を集めた同じプログラムでコンサートが催された。

ローデンの現代音楽に対するユニークなアプローチは多くの批評家に認められるている。その一人、沼田雄司は次のように書いている。「佐藤の演奏を生で聴いたのは初めてだったが、まず意外だったのは、いわゆる“現代音樂弾き”とは若干タイプが異なること。多くの現代音楽系ピアニストが、薄いペダリングやクレッシェンド/デクレッシェンドの極端な強調などを伴った、クリスピーな音色を武器にしているのに対して、彼女の演奏は、すべての音の芯を低めの重心で捉えるようなところがある。・・・・しかし、どの曲も同じようにパキパキッと弾いて一丁あがり、というタイプのピアニストとは対照的なそのスタイルに、プログラムが進むにつれて、じわじわと好感が湧いてきた。・・・・・現代作品を特別視しない演奏、といえば誤解を招く表現になるかもしれないが、余分なけれん味が無いのがかえって新鮮に感じられたのである。また、驚くべきなのは、新作初演も含めて全曲暗譜であったこと。もちろん、暗譜自体に価値があるわけではないにせよ、これは彼女の演奏家としての姿勢を如実に示すものだったと思う。

1998年、ローデンはイタリアのイブラ・グランド・プライズ国際ピアノ・コンクールで現代音楽特別賞を受ける。コンクールの審査員の一人、ジョルジオ・カルボナーレ氏は彼女の演奏の特色を次のように捉えている。「あなたの演奏を聞いたときは、大変な衝撃を受けました。まず、あなたのコンサート・ピアニストとしての解釈力の大きさに、そしてあなたが呈示する現代音楽の美とユニークさにうたれました。現代音楽が過去の偉大な作曲家と肩を並べて同じ舞台にたてるということ、そして現代音楽は我々が生きているこの時代を確かに反映しているという事実に目覚めました。あなたが十河陽一の「悲の地」を弾き始めた瞬間、私はもっとも深い感銘を音楽から受けるという、生涯でもまれな経験を今するのだという感慨にとらわれました。」(コンクール・コメント)

2000年よりローデンはピアノ・ソロ演奏活動に加え、イタリアのピアニスト、サルヴァトーレ・モルティサンティとのデュオ活動をはじめる。2002年5月30日、東京のオペラ・シティー・ホールで、ジョージ・クラムの4手作品、“マクロコスモスIV”を演奏。音楽批評家、道下京子は、「幅広い音色を求めて、鍵盤上で奏するのみならず、ピアノ内部での奏法も駆使されている。二人の演奏は、音色にとどまらず、ピアノという楽器における表現の可能性を聴き手に教えてくれた。副題の「マイク付きピアノのための宇宙のダンス」の通り、音が周りのあらゆる側面に反射する様は躍動感をももたらし、デリケートにピアノを奏する姿は、強烈な印象を与えた。このジョージ・クラム作品は、2002年5月11日、カーネギーホール内のヴァイル・リサイタル・ホールで再演奏された。ニューヨーク・タイムズの批評家アン・ミジェットは“ローデンの堅実、明快でオープンなスタンス”に対しモルティサンティの“柔らかなタッチとロマン派のヴィルチュオーゾのスタンス”は“見事なコンビネーションであった”と述べている。

2003年5月28日にローデンはサルヴァトーレ・モルティサンティとジョイント・リサイタルをヴァイル・リサイタル・ホールで開催し、オリヴィエ・メシアンの「みどり児イエスにそそぐ20の眼差し」の曲目を交互に演奏した。2004年3月、イタリアのカタニア・ライセウムのコンサートで、ローデンは「20の眼差し」のなかから“みどり児イエスのくちづけ”を演奏した。ジョヴァンニ・パスケは、“彼女の奏する響きは類稀なエレガンスと限りない優美さに満ちていた”と書いている。(ヌオヴォ・アブルッツォ、2004年3月24日)

ローデンは横須賀に生まれ、ピアノを橋本鈴枝、野呂愛子に師事、1981年ラトガース大学音楽学部でサミュエル・ディルワース=レズリーの指導のもとで修士号を取得した。アイブスの「コンコード・ソナタ」(ALCD-31)、日本現代ピアノ曲選「WINDOWS」(ALCD-32)と、小島録音より2枚のCDをリリースしている。

To purchase CD’s, please click here.